KOSUKE OKAHARA STUDIO

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Ibasyo – アリーシャ・セットによるBook Journey Projectについての記事

カンボジア、2014年

アリーシャ・セットによるインタビュー記事。於アンコール・フォト・フェスティバル・2014年

ページに登場する人だけが所有できる写真集
著:アリーシャ・セット

世界を巡り、精神的な困難と向き合う6人の女性たちへのメッセージを集める、6冊の特別な写真集

1:写真家がひとつの環を閉じるとき

本のページが埋まると、それらは彼女たちのもとへ渡される。そこで、永遠にとどまる。

彼の椅子の横に置かれていた箱が気になって、話に集中できなかった。2014年、カンボジア・シェムリアップで開催されたアンコール・フォトフェスティバルの長い1週間の終わりに、日本人写真家の岡原功祐と私は昼食を共にしていた。彼に聞きたいことがたくさんあったけれど、あの小さな箱がそこにあった。私はそれが何か尋ねると、彼は私に手渡してくれた。

箱の中には、グレーのリネンで包まれた小さな本が入っていた。表紙の布には、淡く「IBASYO」の文字が型押しされていた。最初のページには、岡原が撮影した6人の日本人少女たちの物語が綴られていた。彼女たちは自らを傷つける行為、すなわち「自傷」を行っていた。

「居場所(Ibasyo)」とは、人が物理的にも感情的にも「存在できる空間」を意味する日本語である。そこは、安心していられる場所であり、心が静まる状態でもある。

本に収められた言葉と写真は、どちらも同じくらい心を揺さぶる。岡原は、ユカが自傷している場面に立ち会ったときのことを振り返ってこう綴っている。

「とても奇妙な瞬間でした。それを写真に収めること。これは本当に正しいことなのか、と自問しました。でも、それが彼女に寄り添う唯一の方法と感じていました。自傷を行う多くの人たちは、自分の存在を否定されたようなトラウマを抱えています。私は、彼女たちのすべての行為を、ただ認めようとしました。」

一枚一枚の写真は、その「存在を認める」という行為の積み重ねだ。ただ、そこにいるということ。

数ページをめくるうちに、私はこの本を「所有したい」と思うようになった。何度も手に取り返したくなるような、そういう種類の本だ。

しかし、巻末にあるエッセイを読んで、それができないことを知る。この本は誰のものにもならない。永遠に。私が手にしていたのは、世界にたった6冊しか存在しないうちの1冊だった。

そのすべてが岡原による手作りで、写真に登場する6人の少女たち——ユカ、カオリ、ヒロミ、ミリ、アイナ、サユリ——の名前が、それぞれの本につけられていた。

そして、その6人こそが、本当の「持ち主」なのだった。

この本には、金銭的なやりとりは存在しない。岡原は、読者に「静かで個人的な空間の中で深く向き合う」ことを求めている。遠く離れた場所で生きる6人の少女たちの人生と経験に、思いを馳せるようにと。

私は、この本に書くよう誘われた。彼女たちへ宛てて。自分の感じたことを、物語への応答として。そのために、本の後半は白紙のページで構成されている。私が手にした本には、すでに何ページかが書き込まれていた。

私は、何を書こうかと考え始めた。

サユリに向けて——彼女は、寝室の床に座り込み、無表情で、深く切り裂かれた手首を見せていた。

カオリに向けて——彼女は錠剤を大量に服用して、病院に運ばれた。

ミリに向けて——彼女は岡原にメールを送り、「自分を変えようと思えるようになった」と綴っていた。

私は、何度も何度も、ページに収められた写真を見返した。

ヒロミの傷跡だらけの手が、虚空へと伸びている。そこには誰もいない。でも、手首の縁に光が差し込んだ瞬間、彼女が何かに——もしかしたら自分自身に——触れようとしているように見えた。

アイナは、パソコンの光を背景に浮かび上がる身体としてフレームに収まっている。ベッドの上にも誰かがいるのだろうか?いや、誰もいない。けれど、シーツの下に誰かが隠れているような、くしゃくしゃに丸まり、静かに押し潰されているような気配がある。

その後、アイナは公共の場でギターを弾いている姿で登場する。壁にもたれ、頭を垂れて演奏している。一人の男が彼女の前を通り過ぎる——ぼやけた輪郭で。その瞬間、彼女はまるで背景の一部になったように見えた。通りの中で、気づかれない存在になっていた。

私は文章をより深く読み込み、そして考えた。「自傷」とは、私の人生にとってどういう意味を持つのか?私はこれほどまでの絶望を感じたことがあるだろうか?なぜ彼女たちは自らを傷つけることを選んだのに、私はそうしなかったのか?私だって、かつてはもっと若くて、自信がなかった。彼女たちは、自分たちの人生でもっとも親密な部分を、世界に見せることに同意した。

私は、彼女たちのことをどう思うのだろう? 勇敢だと思う? それとも、弱い人たち?彼女たちが経験したことを、私は「見た」と伝える機会を得た今、何を言えばよいのか?

私は、一ページだけ書いた。とても難しかった。

ペンのキャップを閉め、本を閉じた。そして気づいた——私は今、何か特別なものの一部になったのだと。岡原が彼女たちのために守り続けている、ひとつの「つながり」の輪に、自分が加わったのだと。

あとで私は「Ibasyo Kosuke Okahara」とGoogleで検索し、誰でも、どこの国の人でも、この本を手に取ることができると知った。岡原が一冊ずつ順番に渡っていくように、この本の巡回を丁寧に調整しているのだった。旅の途中、岡原はブログやFacebookを通じてこの本の旅路を記録し、広い読者とつなげている。本に触れたいと希望する人々へのアクセスも、そこから可能になっている。

「撮影したすべての少女たちが、自分を“誰かの目”を通して見てみたい、と言っていました。

それが自己評価を見つめ直す手助けになるかもしれない、と」

——岡原は自身のブログにこう記している。

「そんなふうに言われるまでは、自分が撮った写真が、人の役に立つなんて思ったこともありませんでした。でも、もし彼女たちが、世界のどこかに自分たちやその物語を気にかけてくれる人がいると知ることができたなら——

それは、失われた自己肯定感をもう一度育てる、小さな一歩になるかもしれません。もしかしたら、そんなふうに言うこと自体が少し上からに聞こえるかもしれません。でも私は、彼女たちに“あなたは大切な存在なんだ”と感じてもらいたいんです。」

岡原は、何か美しいものを目指している。これらの写真は、すでに過去数年の間に、雑誌に掲載され、写真フェスティバルやギャラリーでも広く公開されてきた。それでも彼は、この「Book-Journey Project」を通して、作品に新たな命と意味を吹き込んだのだ。

写真業界のベテラン、スティーヴン・メイズはこう語っている。「写真家はもはや、他人が管理・統制するプラットフォームの謙虚な供給者である必要はありません。“出版者”として考えることで、彼らは自分自身でテーマや観客、表現手段、流通方法を選ぶことができるのです。目の前にある機会をどう活かすかは、部分的には問題解決の能力、そして何より“想像力の挑戦”なのです。」

岡原はその挑戦を、まっすぐに受け止めた。これら6冊の写真集をアート業界の経済圏から切り離し、美術館やギャラリーを経由させるのではなく、それぞれ独自の経験を持つ「ふつうの人たち」へと直接手渡すことで、見る者・読む者・受け取る者に、作品との「関係性」や「親密さ」を与えたのだ。

岡原は、一人ひとりが持つ固有の視点を尊重し、彼らが自分だけの静かな空間、すなわち「それぞれの居場所(Ibasyo)」のなかで物語と向き合うことを大切にしている。

この物語を撮り始めてから10年。岡原はひとつの環を閉じた。彼に自分たちの物語を託してくれた女性たちへ、今度は彼が世界を届ける方法を見つけたのだ。そして、彼は今もなお撮り続けている。作品が商業的な成功を収め、こうして書物として世界を旅するようになった今でも——彼は彼女たちの写真を撮ることをやめていない。回復してきた人もいれば、そうでない人もいる。もうすぐ良くなりそうな人もいれば、逆に悪化するかもしれない人もいる。彼は、今もそこにいる。

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